Lingva Demandokesto ことばの質問箱 横山裕之編 <13>
◆質問 ĵとĝの発音
ĵiとĝi の発音の違いについて、うまい説明があれば教えてください。なお「ĵiはジ(シの濁点)、ĝiはヂ(チの濁音)の差」という説明では、学習者には理解してもらえませんでした。
●回答 ĵiはŝiの有声音(いわゆる濁音)、ĝiはĉiの有声音なのですが、それを日本語の「シ・ジ対チ・ヂ」にすぐに結び付けない方が良いです。
ŝやĵは「舌の前方が(上の歯茎の後ろには近づくものの)口のどこにも触れないで、そのまま空気の通り道を狭くして、そこを通過する息がこすれる」という発音です(摩擦音といいます)。
これに対して、ĉやĝは「舌の前方が上の歯茎の後ろ辺りに一度触れた後にすぐに離れる」という発音です(破擦音といいます)。この差を強調するのが良いでしょう。
一方、現代日本語では(高知方言などを除くと)「ジ」と「ヂ」の発音上の区別はありません。どちらも語頭では有声破擦音[dʒ]に、語中・語尾では有声摩擦音[ʒ]になることが多くなっています。つまり、日本語の「ジ・ヂ」は語源的な差でしかありません。そこで「ĵi・ĝi」を「ジ・ヂ」で説明すると、かえって混乱することになりかねません。
なお、外国語の得意な方には、英語なら「ĵはpleasureの中程の音、ĝはjoyの頭の音」、フランス語なら「ĵはjourの頭の音、ĝはadjutantの中程のdjの音」という説明ができましょう。
ちなみに英語のjazz(ジャズ)の冒頭はĝの音で、この語がエスペラントに入ってきたときはĝazoと発音寄りの綴りでしたが、最近ではĵazoと見た目が似た綴りが主流になっています。
(回答者:編集部、なお小川博仁氏のご教示と小坂狷二著『エスペラント捷径』を参考にさせていただいた)
【La Revuo Orienta誌 2018年6月号より】