広報委員会 2021-03-30
シリーズ「エスペラントの今」第22号
エスペラントの現状を様々な面からご紹介するシリーズの第22回目をお届けいたします。ご質問、取材問い合わせ等は、当協会広報委員会までお願いします。
世界文学と〈東西双書〉
世界の名作をエスペラント訳で ― ユネスコの東西文化交流プロジェクト
今年2月、エスペラント版『ペルシア文学選集』が出版されました。中世から現代までの作家・詩人57人のプロフィールと作品の一部を、時代順に配列しており、この一冊でペルシア文学のあらましを知ることができます。
ペルシア文学、と聞いても、私たちにはあまりピンとこないかもしれません。外国文学といえば、欧米が圧倒的であり、ユネスコの統計資料によれば、世界中での翻訳文学作品の7割が英独仏露を原典としており、言語間で著しい不均衡が見られます。一方、エスペラントに訳される文学作品では、日本語も含めての様々な言語から訳されており、英独仏露からの訳はおよそ3割です。(昨年、エスペラントへの翻訳文学作品は344点でした。)
1957年、ユネスコ事務総長は協力機関に対し、「東西文化価値の相互交流に関する大企画」に対しての協力を要請しました。ユネスコと協力関係にある世界エスペラント協会はこれに呼応して、〈東西双書〉の刊行を決めました。本双書に入る作品は世界エスペラント協会の認定を得た優れた翻訳です。そして、『ペルシア文学選集』は〈東西双書〉の58番目の出版物となりました。
実際にどのような作品が今までに刊行されているのかを紹介いたします。双書の第一弾はタゴールの『飢えた石』、原作はベンガル語です。第二弾は日本から『森鷗外作品集』。日本からは他にも、井原西鶴、谷崎潤一郎、川端康成、井上靖、有吉佐和子の作品が双書として刊行されています。翻訳元言語でいうと、英独仏露以外に、アラビア語、スペイン語、ラテン語、中国語、チェコ語、フィン語、ギリシア語、ヘブライ語、マジャール語、イタリア語、トルコ語、ベトナム語、パーリ語、ガリシア語など、多種多様です。有名な作品としては、『リア王』、『水滸伝』、『パリの憂鬱』、『若きウェルテルの悩み』、『百年の孤独』、『痴愚神礼讃』、『罪と罰』、『ブリキの太鼓』、『東方見聞録』、『ロボット』、『西遊記』など。日本語訳がないものも10点以上にわたります。
エスペラントは、世界で影響力をもつ有力言語だけでなく、すべての言語の間での仲介言語・橋渡し言語として機能しています。そのことを如実に〈東西双書〉は示しています。
リンク:PDFファイル(228KB)
「エスペラントの今」これまでの発行分