「エスペラント / La Revuo Orienta」 1997年1月号掲載

エスペラントの時代対応力

エスペラントが初めて提唱されたのは1887年のことでした。 その当時はコンピュータはおろか、 テレビ、飛行機、ラジオ、電話さえありませんでした。 それ以後の百年あまりの間に世界は、 社会主義革命、第二次世界大戦、 原子力、第三世界の独立、宇宙開発、コンピュータ時代など 多くの時代の変遷を体験してきました。 その間、エスペラントは当然、 世界の変化に対応して新しい単語や表現を持つようになりました。

「人工語」というと、 だれか一人の人やどこかの組織が なんでも決めるように思えるかもしれませんが、 エスペラントではそのようなことはありません。 ザメンホフが生きていたときでさえ、 彼は自分で決めたことを人に押しつけるという姿勢を好みませんでした。 エスペラントアカデミーという機関もありますが、 これが果たしてきた機能は、 新語の制定や規制というよりは、 すでに使われている単語を公用語として認定することです。 より重要なのはエスペラントの使用者それぞれの意思です。

ある用語や表現が必要だと思う人は、だれでも それを提案することはできます。 それが実際に使われるようになるかどうかは、 その必要性・妥当性を 他のエスペラント使用者が受け入れるかどうかによります。 権威ある団体や人の意見が尊重されることもありますが、 そうともかぎりません。 いくつかの語形が競合して併用され、 しばらくしてからようやく一つの語形が定着するということも 少なくありません。

エスペラントが現実世界で言語として実際に使われ続けるためには、 当然、時代対応力が必要です。 それは非常に柔軟な時代対応性なのです。

(後藤斉)


これは 「Revuo Orienta (1997年1月号)」の特集記事からの抜粋です。 コメントや問い合わせは 「日本エスペラント学会 ウェブ管理人」宛でお願いします。

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