ザメンホフは このことばを 「Lingvo Internacia」(国際語)という題の小冊子で発表した。 Esperanto は、これを発行する際の彼の筆名であり、 この単語には「希望しつつあるもの」という意味がある。
激しい民族的偏見と、 命までもが危険にさらされるような差別を体験したユダヤ人ザメンホフが、 それでも絶望の淵におちいることなく、また ほかの民族に対する憎悪に身をまかせるのでもなく、 あえてEsperantoという筆名を選んでこのことばを発表した意味は重い。 間もなく21世紀をむかえる今日でも、 人間は国境をへだてて互いに不信感をいだき、 「防衛」という名の戦争の準備に多大なエネルギーを浪費している。 そして、現に戦争は絶えたことがない。 しかし、その一方、民族間の相互不信をやわらげ、 なんとか戦争を防ごうとする人たちも、決して少数ではない。
1887年に発表された「国際語」は、 その後 この著者の筆名をとって「エスペラント」とよばれるようになった。 このことばを自分のものとして大切に思う人たちは 今でも「エスペラント語」ではなく「(国際語)エスペラント」とよんでいる。 また、人類がその視野を宇宙にまで広げた今、 国境の概念にとらわれた「国際語」の冠を捨てて、 このことばを「地球語エスペラント」とよぶ人もあらわれてきている。
(藤巻謙一)
これは 「Revuo Orienta (1997年1月号)」の特集記事からの抜粋です。 コメントや問い合わせは 「日本エスペラント学会 ウェブ管理人」宛でお願いします。
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