「エスペラント / La Revuo Orienta」 1997年1月号掲載

世界のことばでエスペラントにいちばん近いのは

一概に断定できません。

まず、発声については、 母音は日本語(!)や スペイン語、イタリア語とほぼ同じ。 子音は、英語にいちばん近い。 アクセントの位置ではスペイン語やイタリア語と同じ。 全体として、耳で聞いた感じでは、スペイン語のような印象です。

語彙の大部分は、ヨーロッパの主要言語から採用したものです。 D.B.グレガーの研究によれば、 創始者ザメンホフがはじめに制定した基本語彙2612個の語根のうち、 (少数のギリシア語由来や人工語彙を除いて) 純スラブ系(ロシア語など)は29個、 純ゲルマン系(英・独語など)は326個、 純ラテン系(仏・西・伊語など)は861個、 ラテン系由来のゲルマン系は663個となります。 つまり、ラテン・ゲルマン系が合計1,850個で全 体の66%を占め、西欧的性格が明瞭です。

しかし、構文という点では、 比較的自由な語順や無人称構文の用法などで、 むしろスラブ語に似ているとも言えます。

最後に、言語の構造から見ると、 ラテン・ゲルマン・スラブ系の言語(「ヨーロッパ語」)は 文法的機能を語形変化によって表す「屈折語」ですが、 エスペラントは語根に接辞や語尾を添加する方式による 「膠着語」(または「孤立語」)によく似ています。 つまり、日本語や中国語に近いとも言えるでしょう。

国際語エスペラントは、このように多彩な「顔」を持っているのです。

(水野義明)


これは 「Revuo Orienta (1997年1月号)」の特集記事からの抜粋です。 コメントや問い合わせは 「日本エスペラント学会 ウェブ管理人」宛でお願いします。

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