エスペラントを学んでいて、それが独特の言語なのだ、ということを実感するのはどんな時でしょうか。もちろん、エスペラントを使って人と話をする時というのは、その代表的なものだと思います。ただし、エスペラントで書かれた小説を通して、これまで想像もしていなかった世界に触れ、イメージを含まらせる瞬間も同じくらい代表的ではないでしょうか。エスペラントでは短編小説をnovelo、長編小説をromanoと呼びます。romanoは言うまでもなく長く、世界観が濃く描かれているし、主人公の人生に関する様々な側面が描かれます。端的に言えば、そこに没入する空間が用意されているのです。エスペラント原作のromanoも多数あります。今回はそんな異世界への扉を集めてご紹介します。
3月末までの予定で、エスペラント会館3階の図書販売部門に特設コーナーを設けています。是非ご覧いただき、本をお読みください。(ネットでのご注文もこちらのページから可能です!)
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本ページでは、集められている本の情報をご紹介します。定価も参考に記載している場合がありますが税抜となっていたり、現在の価格とズレている可能性がありますので、ご注文の際はJEIまでお問い合わせください。また、すでに売り切れになっていることもございますのでどうかご了承ください。
また今年度のフェアの予定は以下の通りです。是非ご注目ください。
2023年4月〜6月「エスペラント教育・研究」(終了いたしました)
2023年7月〜9月「絵本・漫画等」(終了いたしました)
2023年10月〜12月「翻訳:初期のものを中心に」(終了いたしました)
①冒険小説
- Teo Jung, Landoj de l’ Fantazio, 2018, 4,600円+税 エスペラント原作の長編小説で、忘れられた山脈の中にある幻の国の首都ラスパーゾを訪れたアメリカ人飛行士たちの体験を描いています。
・Sándor Szathmári, Vojaĝo al Kazohinio, 2021, 2,800円+税
船の難破により、主人公はヒンの人々が住む国へと迷い込む。そこでは統治の問題が完全に解決されていた。さらに、その近隣には別の民族であるベヒンの人々がおり、、。ガリバー旅行記の類型に当てはまる長編小説。
②ポーランド関連のハードカバー出版
エスペラント関連三団体の共同出版によって、近年ポーランドに関係するハードカバーの長編小説が出てきています。そのうちのいくつかは古典で、また比較的新しいものも含まれています。(Podlaĥia Biblioteko, Bjalistoka Esperanto-Societo, Libro-Mondo)
- Bolesław Prus, La Pupo, 2016, 3,900円+税 19世紀中葉のワルシャワ、貴族階級の令嬢に恋をする商人を通してポーランドの社会を描いています。
- Henryk Sienkiewcz, Tra Dezerto kaj Praarbaro, 2017, 4,700円+税 ヤング・アダルト向けの長編小説で、19世紀末にスーダンで起きたマフディーの乱の最中に拉致された少年少女を描いています。
- Henryk Sienkiewcz, Quo Vadis, 2016, 4,200円+税 1世紀、ローマを舞台に恋愛や上流階級の堕落、キリスト教の弾圧などを描いています。著者シェンキェヴィチのノーベル文学賞受賞に貢献したともされています。
- Ludmila Ulickaja, Daniel Stein, interpretanto, 2021, 7,500円+税 ホロコーストの時代を生き抜き、後にイスラエルに移住したポーランド出身のユダヤ人を描いたフィクションで、異なる文化を超えた交流の架け橋になろうとする努力を描いています。現在活発に活動しているロシア人小説家の代表的な小説の一つ。
③戦争に関係した長編小説
エスペラントの小説に意外と多いのが、第一次大戦・第二次大戦に関連したものです。エスペラント原作小説もあります。
- Raymond Schwartz, Kiel akvo de l’ rivero, 1991, 3,300円+税 ベルリンに旅行していたパリジャン、ピエールは1914年、突然始まった第一次大戦の中でドイツ脱出を試みます。平和の脆さ、日々の単純な喜びについて描いています。エスペラント原作の長編小説のなかでも一級の評価がされている古典です。
- Karlo Ŝtajner, 1000 tagoj en siberio, 1983, 3,000円+税
- Claudio Magris, La muzeo de milito, 2019, 3,500円+税
- Jaroslav Hašek, Ŝvejk: Aventuroj de la brava soldato Ŝvejk dum la mondmilito, 2004, 5,800円+税
- Prežihov Voranc, Doberdo : la primilita romano de la slovena popolo, 2016, 3,500円+税
- Constantin Virgil Gheorghiu, La horo 25, 2022, 5,600円+税
Trevor Steele, Neniu ajn papilio, 2000, 2500円+税 ナチスの強制収容所に入れられた人々のために、戦後ドイツで作られた社会復帰のための施設で働くマークの手記を通して、その体験を描いています。伊藤俊彦『歴史・文学・エスペラント』でも紹介されています(p.15)。
④古典長編小説のエスペラント訳
- Miguel de Cervantes, La inĝenia hidalgo Don Quijote de la Mancha, 1977, 7,500円+税
- A. Dumas, La grafo de Monte-kristo, 2010, 9,800円+税
- Ŝi Nai’an, Ĉe akvorando, 2004, 15,000円+税
- Endoo Ŝuusaku, Silento, 2010, 1,300円+税
- Mao Dun, Noktomezo, 2010, 3,100円+税
- Murasaki Ŝikibu, Rakontaro de Genĝi: Parto 1, 2020, 300円+税
- Sagao de Njal, 2003, 3,200円+税
- Nguyén Du, La rakonto pri Kjeŭ, 2012, 2,600円+税
⑤社会風刺
- Jlio Baghy, Hura!: Ne Romano, Nur Grimaco, 1986, 2,300円+税 タイトルに長編小説ではないと明記されていますが、エスペラント原作の小説で間違いありません。架空の国バゴニーオを通してヨーロッパ社会を風刺しています。
- Jérôme Leroy, La minuto preskribita por la sturmo, 2014, 2,600円+税 2015年フランス、リールで開催された世界大会に合わせてフランス語から翻訳された本作は、リールを舞台に終焉する世界を眺める恋人たちを描いています。
- Guzel Jaĥina, Zulejka malfermas la okulojn, 2022, 7,700円+税
⑥その他
- Hendrik Bulthuis, La Vila Mano, 1991, 1,500円+税, 北部オランダ、酒場で飲む村人たちが毛むくじゃらの手についての噂話を共有します。そこから起きる出来事の数々が描かれます。エスペラント原作の長編小説。
- Blazio Vaha, Adolesko, 1987, 1,600円+税
- Darik Otira, Vojaĝo al kuniĝo: konfeso de seksobsedito, 2010, 4,400円+税
- Sten Johansson, Secesio, 2021, 3,600円+税
- Günter Grass, La lada tambreto, 2000, 4,800円+税
- Marko Jeluŝic, Cezaro, 2021, 3,700円+税
- Chistian Declerck, Tarokoj kaj epokoj, 2002, 5,200円+税